ドクン、と…、動いた―――…







夜の明かりの中、背にしたなだらかな坂はひんやりとして気持ちがよく、時折吹きつける風もまた気持ちがよく思えた
寝転がっているせいで、満天かも知れないと思える星空が視界を満たしている
明るさの源である月は雲の間から降り注ぎ、またすぐに雲に隠れてしまいそうだった





また、動いた―――…





顔だけ横を向き、口の中が切れて口内に溜まった血を吐き出す
右の腕を激しく抉られてしまった為に、意識が混沌に落とさ…、れ、る―――…









「―――…ナ、ジェナ、…聞こえるか?」
「はか、せ…」
「また故障かと思って少し焦ったじゃないか」
「…わたし、ねてた、の?」
「話してたらいきなり倒れたんだ。エイダが驚いていたよ」
「…そっか…」


博士が紅茶を飲み干して、席を立った
その横には、まだ未熟なブラザー・エイダが瞼を閉じて静かに座っていた
まだ幾日しか動けない未熟な、未完なブラザー
そんなだからきっと、驚いた拍子に回線が途切れたのだろう
寝息は聞こえなかった


「ジェナ、明日はシスター・エーヴェに家の事を教えてやってくれ」
「随分と早くに出来たんだね」
「エイダの資料と大して変わらないし、ジェナの資料と合わせたからね」
「…博士、私今日はもう眠っていいかな」
「あぁ、いいよ。エイダはそこでいいからね」
「わかった」




…ヒューロ―――――――…


「…博士、…おやすみ」
「あぁ、おやすみ」




また、動いた―――…



これが最後だと思って目を閉じると、月は雲に隠れて、暗闇が身体を包み込んだ




『始めまして。声は聞こえるかな?』


あの夜に外で確実に止まったはずの心臓があった場所に何かが埋め込まれていて、それは規則正しい動きをしていた


『…ヒュー、ロ………』


白い服の男は揺れる視界の中で静かに笑って、明かりを消した
また、暗闇に包み込まれる…




『始めまして。声は聞こえるかな?』
『…だれ?』
『僕は"博士"』
『はかせ?』
『そう。君は、ジェナと言うんだ』
『…ジェナ…』



白い服の男は穏やかな笑みを浮かべてスイッチを切り、私がいた液体を下に流し落とすと、隣のスイッチを押してガラスを取り外した



『おはよう、ジェナ』
『…』
『挨拶だよ。覚えてないかい?』
『おはよ、う……、博士…』



その日の月は、雲一つない空に輝いていた





次は「う」