『シロウ君』



 人がほとんどいない、田舎らしい駅のホームに立ちすくんだ

 あの人はもう帰ってこないのに

 少なくとも、次に会う時はきっと、隣に俺の知らない男の人が立っていて…



 そして、満たされた微笑を向けてくれるのだろう







『私の心には、穴が開いてるの』



 夏前の涼しい世闇の中

 彼女が唐突に呟いたその言葉を聞き漏らさなかった



 ここに来たての頃は、確かにうまく笑っていなかったように思える

 その時は幾分かましになっていたけれど、何か、何かが足りない感じがする




『思い出せないの。思い出したいのに…出来ないの』




 満天の星空を見上げるその表情はどこか曇っていた










 昨日の夜

 寝ずに話し明かした中で、半分以上、彼女は、メイちゃんは…泣いていた




『…浮かんでくる人はいるの。でも、…名前が、思い出せないの…』



 メイちゃんの心を占めるその男の人は誰なのだろう

 彼女を大切に思ってくれている人がいい

 そうじゃなきゃ、駄目だ



 彼女は幸せになって欲しい







『…今日も、空は青いな!』










 仰ぎ見る空が、眩しかった













 後日、メイちゃんから掛かってきた電話は、とても、嬉しそうだった





『思い出せたの、私の大切な人』






 それならいいんだ


 俺は二番目でも









『…コウキ――――――』



end.

さりげなく宣伝
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