数え切れないほどの罪を背負って生きる覚悟がある。抱えきれないほどの哀しみを育み、足跡代わりに血の轍を刻んで生きると決めた。貴方が手を差し伸べてくれたあの日から、生まれて初めて生きることを許されたあの日から、私の全ては貴方のために。

「だから、僕に刃を向ける?」
「そうよ」
「愚かなことだよそれは」

 だから、奪わないで。

「君が僕に勝てるわけない」





「どうして奪おうとするの」

 幼い少女の悲痛な声に、風の精霊たちが嘆きの歌を奏でる。少女の手に握られた剣の切っ先は小刻みに震え、裏腹に乾ききった瞳に、押し殺していた感情が鎌首をもたげた。

「どうして守ろうとするの?」

 可哀想なお姫様。君はどうして、闇を望むの?

「漸く光が差したのに」





 傷ついた体を引きずって、尽きかけた魔力を掻き集めて、跳んだ。切り裂いた空間の狭間で揺らぐ意識を、か細い呼び声が支える。

「――触るな…っ」

 震えるその肩を、乱暴に抱いた。

「これは、私のものだ」
「リー、ヴ…」
「渡しはしない」

 誰も見ようとしなかった原石を、私が拾い上げた。長い時間をかけて磨き上げ、漸く輝き始めた宝石を、今更奪わせたりはしない。

「君も、僕に刃向かおうって言うの? この、僕に」
「お前が奪おうとする限り」
「…本当に、愚かだね。君たちは二人して」

 繋がれた手を、断ち切らせはしない。





 目を閉じて、耳を塞いで、紡ぐ愛にも気付かずに、

「――まるで、悲劇だ」

 堕ちていく。





「魔女の棲む森」小噺(というか、予告編?)

次は「で」
いつもとめててすんません